Activities
東京大学大学院 工学系研究科 助教 谷田桜子
研究課題名:Synchronization in Elevators with Transfers
派遣先:Friedrich-Alexander-Universität Erlangen-Nürnberg
受入研究者:Prof. Thorsten Poeshel
本共同研究では、過去に打ち合わせを行った後、数年間停滞していたテーマを遂行しました。こ
ーマは、申請者が2022 年に発表した論文が、今回の受け入れ研究者であるPoeshel 教授の30 年前
究を基にしていたことがきっかけで、2022 年にメールで議論を行ったことにより再び始まりました
請者は2022 年中にPoeshel 教授の研究室を訪問し、議論の結果、初期モデルを作成し、予備的な
を得ていました。しかし、他の業務に追われ、数年間進展がない状態が続いていました。
そこで、本テーマの研究に集中し、論文を完成させるために、共同研究者との議論の効率を高め
とを目的に、本申請の研究者交流制度を活用して、共同研究先の研究室に滞在しました。共同研究
は研究室内に座席を用意してもらい、計算機資源については申請者がこれまで使用していた機器を
込み使用しました。滞在の初週には、自己紹介を兼ねて1 時間半のセミナー発表を行いました。
研究テーマや問題設定の大枠は決まっていたものの、具体的にどの現象を詳細に調べるかは決定
いませんでした。そこで、最初の2 週間は、エレベーターに限らず交通系の実際の運行規則を参考
デル化を行い、数値シミュレーションを実施しました。その後、Poeshel 教授と、数値シミュレー
ンで観察された現象の物理学的な重要性や、問題設定が交通系の効率化につながるかという観点か
問題設定の詳細を決定しました。その結果、当初エレベーターを想定していたシステムを、路線バ
含む固定経路と特定の停止点を持つ交通システムへと拡張しました。また、特定の範囲しか移動し
乗り換えが必要な交通だけでなく、全範囲を移動する乗り換え不要な交通も並走させ、部分的な相
用しか生じない場合に、これまで観察されていた同期現象がどの程度発生するのかを調べることに
した。
その後、週に1 度開催される研究室の進捗報告会において、滞在研究室の博士学生とともに進捗
を報告しました。この機会にPoeshel 教授のみならず、他のメンバーからも質問やコメントを受け
とができました。日本の所属研究室では学生のみが進捗発表を行うため、定期的に課題や進捗を他
究者に説明する機会が貴重であり、今回の共同研究滞在では非常に有意義な時間となりました。滞
の研究室では主に粉体の数値シミュレーションを研究しており、申請者の研究とは直接的な技術の
性はありませんでしたが、所属メンバーから積極的に質問やアイデアが出されました。他の研究者
明することで、研究の前提や仮定を再考し、理解を深めることができました。
最終的に、滞在期間中に行った数値シミュレーション研究の内容を、論文の第一稿としてまとめ
とができました。さらに、滞在前に参加したエジンバラでのアクティブマターワークショップでの
を基にしたり、この研究を進める過程で新たなアイデアを思いついたりして、別の論文の準備も進
大枠が完成しています。これまで論文執筆に苦労していましたが、2 か月ほど適度なプレッシャー
で集中して取り組むことで、成果を形にすることができました。
今後もこの研究の投稿・出版に向けて、引き続き交流を続ける予定です。また、今回の滞在を通
信頼関係を築けたと感じており、この研究に限らず、新しいテーマでの共同研究も視野に入れなが
今後も研究交流を継続していくつもりです。